2021年4月23日 〇体内成熟卵子のOPU ・採取卵子の違い 基本的に牛は1回の発情周期で1個の卵子を排卵するので、成熟する卵子は1個です。そのため、OPUで多数の成熟卵子を採取するためにはホルモン処置が必要となります。ホルモン処置は体内採卵の過剰排卵処置と同じプログラムです。体内採卵では発情後、人工授精しますが、体内成熟OPUでは発情時にOPUを行いますので多数の成熟卵子を採取することができます。 ・前処置の違い 成熟卵子を採取するときは通常よりも吸引圧を高く設定します。これは成熟卵子では卵丘細胞が膨化しており、ねばねばしているためです。このねばねばがやっかいで、採取後の検卵作業が通常より一手間も二手間もかかります。フィルターによる濾過ではすぐ目詰まりしますし、ピペットで卵子を取り出すときも周りの膨化した卵丘細胞が邪魔してそのままではうまく取り出せません。どうするかというと、顕微鏡下において注射針のような刃物で卵丘細胞をちょうどいい大きさに切り取ってトリミングをします。そうしてやっと卵子を回収することができます。慣れないうちはこの作業に非常に多くの時間がかかっていました。 ・検卵の違い 通常のOPUの場合は卵子を成熟培養しますが、体内成熟OPUは採取したその日に体外受精を行います。体外受精開始の時間は厳密に決められているので、それまでの作業にもたもたしていると時間を過ぎてしまいます。だいたいのタイムスケジュールは、9:00 OPU開始→15:00 体外受精開始→21:00体外受精終了といった感じです。初めて体内成熟OPUを実施したときはたったの2頭で検卵が終わったのが15:00でした。慣れたらここまではかからないですが、それでも1人でやる場合はほかの作業のことも考えると1日3頭くらいが限度でした。体外受精が終わった後は卵子を裸化(やったことがある人はお分かりになるかと思いますがこれも一手間かかる作業です)して、発生培養(in vitro culture:IVC)を行いますので、片付けや記録をしていたら全部終わるのが23:00ということもよくありました。 ・体外受精の違い さて、このように手間も時間もかかる体内成熟OPUですが、なぜわざわざこのようなことをするのでしょうか。その理由は次回お話ししたいと思います。 前の記事 No.30 家畜の改良技術 その24 OPU編 | 次の記事 No.32 小休止−5 初採卵 |