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笹崎直哉のコラム
バイオジェニックス その2

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2021年4月20日

 とある日、人工哺育をされている繁殖農家さんで診療をしている最中、離乳時期に突入した牛さんの声を聞いて「そういえば牛さんの声変わりの時期っていつなんだろう」とふと思いました。それにとどまらず雌雄で時期が違うのか、声変わりすることで周囲の牛さんの行動が変わったりするのかなどと妄想もしてしまいました(笑)。もし知っている方がいましたら、ご教示下さい(笑)。

 では続きです。前回は機能性食品について触れ、その作用メカニズムの観点からプロバイオティクス(probiotics)、プレバイオティクス(prebiotics)、バイオジェニックス(biogenics)の3つに分けられるところまでお伝えしました。
 これからはその1つ1つについて紹介していきます。

① プロバイオティクス
「生菌」として摂取し、腸内環境を整えることで腸内フローラのバランスを改善させ、健康に有利に働く細菌や酵母を指します。例えば乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、酪酸菌です。これらの菌は善玉菌としての印象が強いかと思います。実際に農家さんでもこれらの生菌剤を添加して病気が減ったという効果を実感されている方がいるのではないでしょうか。一方、私達が食べるものとしてはヨーグルトなどの発酵乳を扱った食品や乳酸菌飲料がこの範疇に入ります。

 さて次のプレバイオティクスの紹介に入る前に、「腸内フローラ」について少し考えてみます。この言葉、皆さんなら1度は聞いたことがあると思います。実は腸内には数百種類、数百兆個に値する細菌が生息し、それがまるで花畑のように腸内に広がっていることから、お花畑を表すフローラ:floraを引用して「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。別名で「叢(くさむら)」という言葉を用いて腸内細菌叢とも呼ばれています。

 腸内フローラはさまざまな研究により、環境を整えることで体内で有益に働いてくれる優れものということが分かり、最近では「腸活しよう!」といったフレーズを耳にするようになりましたね。そんな腸内フローラが健康に関わる役割として主に「腸内の免疫細胞を活性化し、病原菌などから守るバリア機能の向上」や「消化できないものを身体に良い栄養物質へ作り変えてくれること」などがあげられます。
 さらに脳と腸内環境が神経やホルモンなどを介してお互いに密な関係であることが分かったり、太りやすい、痩せやすいといった体質に関しても腸内フローラが関与しているのではないかと考えられてきました。
 私も大学院の実験でこの分野について学ばせてもらうことが多く、自分の食生活を見直さねばと危機感を覚えてしまうくらい腸内フローラは非常に奥の深いテーマだということが分かりました。

つづく

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