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笹崎直哉のコラム
分娩後 初回授精日数について考えてみる

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2021年4月6日

 たまに繁殖農家さんからこんな質問を頂きます。

 「先生、分娩してから30日ほど経過した母牛が発情した場合、種付けしても大丈夫ですか?」

といった内容です。

 皆さんご存知のように分娩後は生理的空胎期間を設け、ビタミン、カロリー、タンパクなどの栄養面をバランスよく補い、しっかりと子宮や卵巣をメンテナンスさせる必要があります。また生理的空胎日数をどう設定するかは自然哺育、人工哺育などの哺乳方法やホルスタイン種、黒毛和種、ジャージー種など品種によっても考え方が変わってきますね。
そこで実際に分娩後30~39日に発情がきた場合、授精を行う黒毛和種繁殖農家さんの繁殖データを調べさせてもらいました。具体的には牛さん1頭ごとの最終分娩日、その後の妊娠までの経過を調べました。

・その農家さんは4月1日時点で経産牛が76頭おり、うち妊娠牛は52頭でした。

・哺乳方法ですが生後7日までは親と同居し母乳で育て、その後は母子分離し人工哺育を開始します。

・今いる妊娠牛52頭のうち分娩後39日までに授精を実施した牛さんは11頭いました。
※分娩後29日までに授精を行った牛さんは1頭もいませんでした。なので分娩後30~39日を対象に調べました。
※早産、死産、流産してしまった牛さんは除外し、カウントしませんでした。

・その11頭のうち初回の授精で受胎を確認した牛さんは6頭でした。ちなみにその6頭の平均年齢は6.5齢で平均産次数は5でした。

 まとめるとその農家さんで今いる妊娠牛のうち21.2%(11/52)の牛さんが分娩後39日までに授精されていました。その牛さんのうち、1回の授精で受胎が確認できた牛さんの割合は54.5%(6/11)でした。

 今回はあくまでも1例なので、参考値としてみてもらえると幸いです。また先ほどお伝えしたように飼養形態や哺乳方法によっても分娩後の初回授精日数に対する考え方が変わってきます。繁殖農家さんであえば分娩間隔短縮はを永遠のテーマではないかと思います。今回の結果から分娩後30日代でも明瞭な発情が確認できた場合は授精を実施してもさほど問題はないように個人的に思いました。

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