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戸田克樹のコラム
第328話「滑車で牽引するときの注意点 その2」

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2021年3月31日

子牛の頭部や足にロープがけが無事に終わり、滑車もセッティング完了。もちろんロープの絡みなんてありません。それでは引いていきましょう…となる前に、やはりこのまま牽引しても大丈夫かどうか、を確認する必要がありますね。

チェックポイント②「産道に乗った胎子の周りにある程度のスペースがあるか」

娩出の際に産道で引っ掛かってしまう場所といえば、頭部、胸部、腰部です。とくに胸部で引っ掛かってしまうと、自発呼吸ができないため子牛は死んでしまいます。このまま引いていいのか、それとも帝王切開すべきか、という重要な確認は本格的な牽引の前に判断しなければいけません。私は牽引の前には胎子の体を時計回り、もしくは反時計回りになでるように触り、胎児と膣壁の間にスペースがあるかを確認するようにしています。手がスーッと通ればその分のスペースがある(=胎児が通るのに必要なスペースはある)ということになります。このときは問題なくスルスル~っと出てきてくれることが多いです。一方、「何とか通るけど手が骨盤に当たり相当痛い!」あるいは「1周どころか半周もできない!」といった場合は帝王切開を選択すべきケースかもしれません(もちろん、最初はそうであったとしても膣壁マッサージを十分に行うことで産道がしっかりと拡張するケースもあります。だから判断は難しいのです…汗)。

産道に乗った子牛を1周ぐるっと撫でられるかどうか

それが私の「牽引可or不可(帝王切開を選択)」を決断するひとつの基準になっています。

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