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松本大策のコラム
原虫ってやっかいだよね その3

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2021年3月29日

 さて今回は、子牛の下痢の原因として全国的に広がってしまったクリプトスポリジウムについてのお話しです。

 クリプトスポリジウムはコクシジウムよりも小型の原虫で、哺乳子牛などでやっかいな下痢を起こします。また、この原虫は人間でもひどい下痢を起こす原因となります。1997年だったと記憶しているのですが(ここのところ、時間の記憶が曖昧で(^_^;。ぼけてきたかな?)、埼玉県において水道水の中に混入したクリプトスポリジウムが原因で、4,700人もの人が一気にひどい下痢(原虫性腸炎)を起こしたことがあります。

 「水道水に混入した」ということからも解るように、クリプトスポリジウムには通常の塩素消毒では効果がありません。またコクシジウムのように簡単に使える駆虫薬がないのもやっかいです。人体薬で、クリプトスポリジウムの薬があることはあるのですが、1錠60,000円!と、牛さんに使える値段ではありません。

 クリプトスポリジウムの消毒には、二酸化塩素が効果的です。試験では100ppmの濃度で1分以内に死滅させることができるそうです。動物用のものが以前は販売されていたのですが、現在は販売中止のようで、人間用のものが楽天で手に入ります。

◎参考

 このタブレット5gを1.5Lの水に溶かせば約100ppmです。現場では、糞便などもあるでしょうから、なるだけきれいに洗浄した上で、もう少し濃いめで消毒するのがよいと思います。
 治療は、人も同じなのですが、二次感染を防ぎ、脱水や塩分のロスを防ぐことで免疫による治癒を待ちます。ただ、クリプトスポリジウムの抗体を含む添加剤もいくつか出ています。例えばゼンラクのグロウパワーやゼノアックのカーフサポート6などです。しかし、クリプトスポリジウムにもいろんな系統があり、どの薬剤が自分のうちのクリプトスポリジウムに効果があるかは、使ってみなければ解りませんし、どちらの効果もそれほどない場合もあります。やはりクリプトスポリジウムの場合は、持ち込まない、広げない、というのが一番の対策だと思います。

 次回は、あまり頻度は高くありませんが、これまたやっかいな「ジアルジア」のお話しです。

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