2021年3月26日 ○卵子を吸引する ここに針を刺して陰圧をかけることによって卵胞液ごと卵子を吸引します。陰圧にするためにはチューブにシリンジを接続して吸ったり、専用の機械を使用したりします。 吸引するときの圧力も目安があり、弱すぎても強すぎてもいけません。機械を用いる場合は教科書的には90~120mmHgとなっており、私は120mmHgで吸引していました。また、体内で卵子を成熟させてからOPUする方法もありますが、その場合は卵丘細胞が膨化して粘度が高くなっているので130mmHgで吸引していました。 卵子を体外で成熟したり受精させたりするためには卵子の周りにある卵丘細胞が重要な役割をするので、吸引するときに卵丘細胞が卵子にくっついた状態で採取することが大事です。吸引圧が強すぎると卵丘細胞が卵子から脱落することがあります。この2種類の細胞がくっついたものを卵丘細胞-卵子複合体(Cumulus Oocyte Complex:COC)といいます。ですので、OPUで採取しているのは正確には卵子ではなくCOCなのです(コラムでは便宜上、卵子と表現します)。卵丘細胞がないと受精しないわけではありませんが、成熟率や受精率、発生率が低下してしまうと考えられています。ですので、吸引した卵子は卵丘細胞の付着具合でランク分けがなされます。ランク分けの一つの例として、私が前職で行っていた分類法を紹介します。卵丘細胞層の数を基準として顕微鏡下で判定します(画像3)。 グレード1:3層以上の卵丘細胞を有するCOCおよび均質な卵母細胞の細胞質 といった具合です。グレード1~3までの卵子が体外培養に使用できますが、発生率を詳細に調べたい実験等のときはグレード1~2までを使用していました。このランク分けはだいたいどこも似たような感じですが、施設によっては微妙に基準が違うこともあるようです。 前の記事 No.26 家畜の改良技術 その21 OPU編 | 次の記事 No.28 シェパード関東 |