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松本大策のコラム
牛もコロナ流行ってます!

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2021年2月22日

 なんか表題を見ると「コロナウイルス牛にも感染か?」なんて怪しいフェイクニュースみたいですけど、人間の普通の風邪の原因として4種類のコロナウイルスが知られています。だから、今回のヤツは「新型コロナ」って言うでしょ?

 それと同じように、牛さんでもコロナウィルス感染症はあります。牛さんの場合は主に腸炎、つまり下痢症状が強いのですが、今年は乳牛の成牛から和牛の子牛に至るまで、各地でコロナウイルスが流行しています(家畜保健衛生所で分析していただいてます)。
 成牛はまだ強いので、生菌剤の給与などで立ち直ることが多いのですが、子牛はそうはいきません。

 子牛で見られるコロナウイルスの下痢も、冬場に多いクリーム色の軟便から水様の下痢です。

 そしてうっすらと出血が混じることもあります。子牛は体力がないのですぐに弱ることも多いのですが、僕たち獣医師にできることと言えば、細菌の二次感染を防ぐために抗生物質を投与したり、生菌剤を与えたり、脱水やミネラルの流出を補うために点滴や皮下補液などで補ってあげることくらいです。

 そして、弱った子牛や体温が低下した子牛には、必殺技としてワクチンを打ったお母さん牛の血液を輸血して、子牛に免疫を与える、というやり方でこれまで30年ほどかなりの子牛を助けてきました。

 しかしながらこの冬に流行しているコロナウイルスはたちが悪いことに、どうもこれまでのワクチンで免疫をあげたお母さん牛の血液を輸血しても、なかなか改善につながらない。とくに低体温が回復してくれない子は、残念ながら1頭も助かっていません。

 このような状況で子牛の損害をなくすには、本来の抵抗力を上げてあげることと、早期発見して、弱らせないように補液などの処置をしてあげることです。
 免疫の中心は、小腸にある「腸管免疫機構」ですから、ここを強化するには1:寄生虫(コクシジウムのような原虫もクーペリアのような線虫も)をきちんと駆除する、2:生菌剤で腸内環境を整える、そして3:冷やさないように床をしっかり乾いた暖かい敷料で満たす、を心がけましょう。下痢が出たら、早めに粉末初乳製剤を与えて(免疫は吸収はされませんが)、腸管内のウイルスがとりつく前に免疫で捕らえることも効果があります。

 今週は、また真冬並みに冷え込むとのこと。子牛たちの健康状態に十分気をつけて保温など行ってあげましょう。

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