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蓮沼浩のコラム
第653話:臍動脈閉鎖不全 その4

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2021年2月4日

 先日ヘラ師の師匠から「蓮沼さん、ここは道場だからね」と野池の横で言われました。たしかに、神経を集中して明鏡止水、無念無想の境地でウキの動きをみることは武道に通じていると一人納得。

 臍動脈閉鎖不全というテーマで駄文をかいてきました。あまり気にしていない方も多いかもしれませんが、小生たち獣医さんはそれこそいつも子牛の血液検査を実施しているので、しょっちゅう子牛の貧血をみます。子牛の治療をする時は体温、便の状態、呼吸の状態、脱水の有無などをみると思いますが、それ以外にも可視粘膜の色調、お臍の状態、心拍の状態などの診察も貧血を診断するためには重要だと思います。そして気になるときは速やかに血液検査を実施して、場合によっては輸血の実施も検討。

 お臍の問題は、臍動脈閉鎖不全だけでなく臍帯炎、臍動脈遺残、臍静脈遺残、尿膜管遺残などもあります。生まれてすぐの子牛のお臍は必ずチェックする必要があります。

 ・ 臍帯が根元から切れていないか?
 ・ 臍動脈や臍静脈がお臍から出た状態になっていないか?
 ・ お臍から出血が続いていないか?

 最初の処置が悪かったために、そのあとの子牛の育成に悪影響を与える事例も多数あります。お臍の病気は侮ってはいけません。

 今、世の中では受精卵移植やOPUなどが広がってきています。あくまでも小生の経験の範囲ですが、過大子が生まれる事例も結構経験しています。体細胞クローン牛でも過大子の報告はあります。そしてこれらの過大子に特徴的な所見として、臍帯の大きさがあると思っています。とにかく臍がデカイです。さらには、臍帯血管の退縮不全があります。原因はわかっていませんが、臍動脈閉鎖不全は臍帯血管の退縮不全も原因の一つだと考えています。今後生まれてくる子牛が大きくなるにつれて、このような問題も今まで以上にクローズアップされてくるかもしれませんね。

 とにかく、子牛が生まれてきたらお臍のチェックは忘れずにしましょうね!

今週の動画
「Pregnancy test using blood part 3  血液を使った妊娠鑑定(その3)」

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