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松本大策のコラム
乳頭糞線虫

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2021年1月25日

 1月ももう終わりなのに、コロナ対策は何やってんでしょうね。今朝のニュースでも、ガースーは「コロナ時代に世界のリーダーシップをとる!」とか言ってましたけど、ワクチンすら輸入に頼っている、自国の領土すら護れない国にリーダーシップが取れるわけないでしょう。

 ま、愚痴はおいておくとして、この冬僕のコンサル先で「乳頭糞線虫」による急死が数件出ています。乳頭糞線虫というのは、母牛が感染していると、胎盤を通じて子牛に感染したり、乳汁(つまりおっぱい)の中に入ってきて子牛に感染したり、普通に母牛の便の中に出てきて、それが子牛の口から入っていったり、ほかにも母牛の便から孵化した子虫が、子牛の皮膚から浸入したり、というほかの線虫にはない感染経路を三つも持っているやっかいな寄生虫です。

 しかも、この乳頭糞線虫が大量寄生すると(詳しく言うとウンコ1g中にこの虫の卵が10,000個排出されるくらい)、子牛は心臓麻痺を起こして死んでしまうのです。突如として死亡するので、子牛のポックリ病とか奇病と呼ばれていました。
 この虫にもアイボメックなどのイベルメクチン系駆虫薬は効果がありますので、きちんと駆虫しておけばそれほど問題にならないのですが、そこはたまにやらかしてしまうのが人間です。喉元過ぎれば熱さ忘れる、ではありませんが、寄生虫病があまり出なくなって駆虫薬を使わなくなっている農場も見かけますから、ここは一度見直しておきましょうね。

 寄生虫はスプリングライズ(春の目覚め)といって、温かくなるといきなり活動を活発化させて、卵もドッと産むようになるので注意しましょうね。

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