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蓮沼浩のコラム
第651話:臍動脈閉鎖不全 その2

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2021年1月21日

 先日ヘラブナ釣りの例会にいってきました。5名中4位なり。経歴うん十年の歴戦の猛者である「ヘラ師」の皆さんの技術はすさまじいものがあります。何事もいつも勉強です。

 臍動脈は2本あります。この臍動脈からの出血は、分娩後に臍動脈が引きちぎれることと、子牛の肺循環確立による動脈血酸素分圧の増大が刺激となり血管が収縮することで止まるといわれています。
 
 小生は仕事柄、今までに非常にたくさんの子牛の剖検を実施してきました。何頭も解剖していると、死亡した子牛の中にはこの臍動脈からの出血が続いていた形跡が残っている症例があることに気が付きます。臍動脈を包んでいる薄い膜の中に、大きさに違いはありますが、写真のような「血だまり」ができているのです。


このように臍動脈のまわりに「血だまり」ができます

 このような傾向は特に過大子に多いです。過大子は臍帯が非常に太く、臍動脈の収縮が不完全になり血液を止めきれていないようにも思います。いわゆる臍動脈閉鎖不全がおきやすいと考えています。また、新生子の低体温症の個体の血液検査を実施すると、多くの症例で「貧血」の所見が得られます。さらに、出生後あまり元気のない子牛などもかなりの頻度で血液検査の結果から「貧血」の所見が得られます。あくまでも小生の感覚の話になってしまうのですが、子牛の生理的貧血のなかには、このような臍動脈からの出血が関与しているものも結構あるのではないかと考えています。

 臍帯から血液がでていなくても、お腹の中に「血だまり」ができており、この「血だまり」が凝固することで臍動脈からの出血を止めているのではないかと考えています。実際に現場では臍帯からの持続出血に対しては、臍帯を結紮することで止血するようにしています。そして、状況に応じて輸血を実施しています。

 腹部エコーなどでどこまで臍動脈の出血を判定できるかは今後の課題です。ひとまず怪しいときは血液検査と輸血で対応しています。

今週の動画 「Pregnancy test using blood 血液を使った妊娠鑑定」

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