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江頭潤将のコラム
No.16 家畜の改良技術 その14

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2020年12月25日

○新たな雌雄産み分け法
 最近、といっても去年の夏になりますが、広島大学島田教授の研究グループが「簡便かつ安価な雌雄産み分け方法の開発に成功!〜哺乳類のX精子とY精子に機能差があることを初めて実証〜」という発表を行いました(論文はこちら)。広島大学ではマウスを用いての研究が行われ、大分県ではその技術を応用して牛と豚の雌雄生み分けに成功しています。リンクに詳細がありますが超絶ざっくり説明すると、X精子にのみくっつく“重り”を使って精子の動き(泳ぎ方)に差をつけてX精子とY精子を分離するというものです。しかも、この“重り”は後から外すこともできるようです。この研究で利用されたX精子とY精子の違いは「Toll様受容体(TLR)」のうちTLR7とTLR8というもので、X精子にのみ発現しているそうです。この受容体(レセプター)にくっつくものが重り(リガンド)です。他にも何か違いが見つかれば、技術を組み合わせることによって生み分けの精度が上がるかもしれませんね。

 さらに、今年の7月に広島大学にビル&メリンダ・ゲイツ財団から約3億円の助成が決まった旨の発表がありました。この助成によってさらに研究が加速すると思います。技術的にはまだ発展途上のようで完全な実用化には至っておりませんが、現在共同研究が進められているようですので今後の報告に期待しております。

 この日本発の技術が実用化された暁には、より安価に、利用制限を気にせず性選別精液を使用することができるようになるでしょう。ただし、論文などで報告される技術は多々ありますが、この実用化という部分が難しく、そこまでいかないことがほとんどなのも事実です。いつの日か現場で使えるといいですね。

 個人的に嬉しかったのが、大分県の研究担当者が大学の研究室の後輩だったことです。後輩の活躍している姿を見ると自分はまだまだ鼻くそレベルだなーと感じます。いやー、みんな頑張ってるなー!!

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