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松本大策のコラム
生産性を阻害する要因(病気)を抑える(7−11)

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2012年2月20日

− 第7章 ワクチン実施上の注意 その11 −
マイコのワクチンはなぜないの?

 最近(でもないか?)子牛から肥育導入時などで問題になっているマイコプラズマですが、これこそワクチンがあればいいのになぁ、って思っている方は多いと思います。需要は十分あるはずなのに、どうしてマイコプラズマのワクチンは売ってないのでしょうか?

 じつは、マイコプラズマのワクチンの開発はとても難しいのです。ワクチンというのは、ある特定の病原体に対する免疫抗体を作るためのものです。免疫抗体というのはそれぞれの病原体にぴったりあったオーダーメイドの檻みたいなものです。免疫抗体を作るのは牛さんなど、ワクチンを打たれた動物の身体です。ワクチンには、病原体を殺すか(不活化ワクチン)弱らせるかした(弱毒生ワクチン)ものが含まれていて、その病原体の特徴を教えるための薬なのです。

 抗体を作るには、マクロファージという免疫細胞が病原体を「抗原(自分と違う侵入者)として認識し、その形をBリンパ球に伝えなくちゃいけません。しかし、マイコプラズマは、ころころと形を変える(難しく言うと「表面抗原を変化させる」といいます)ため、昨日のマイコプラズマでワクチンを作っても、今日はマイコプラズマが別の形をしているから、せっかく昨日のマイコプラズマに合わせて抗体を作っても、今日のマイコプラズマには檻の形が合わないから捕まえられないというわけです。

 ヒトのエイズウイルスのワクチンが作れないのと同じ理由なんですね。

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