(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第647話:不顕性感染

コラム一覧に戻る

2020年12月17日

 焼酎のお湯割りがおいしい季節になってきました。ゆっくりと味わって飲むと心も体も温まって癒されます。飲みすぎるとカミさんに無茶苦茶怒られるので、節度を持って楽しみたいと思います。

 今、日本で広がっている様々な伝染病。つくづく対策が難しいと感じます。その理由のひとつがタイトルにある「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」になります。

 ではこの不顕性感染とは何か?

 ◎ 不顕性感染
 「細菌やウイルスなど病原体の感染をうけたにもかかわらず、感染症状を発症していない状態」

 このように定義されています。感染したすぐ後に症状が強烈に出て、あっという間に死亡してしまう伝染病は怖い印象があります。しかし、疫学的には症状のない不顕性感染の方が問題となります。発症していなくても、病原性微生物をまき散らしている可能性があるからです。知らない間に周りに感染を広げている。本当に、本当に厄介です。

 12月15日の新聞を読んでいると、以下のようなタイトルの記事がありました。

 「感染鶏、生存長期化か」

 今回広がっている鳥インフルエンザは鶏が感染してから死亡するまでの期間が長くなっていることが書いてあります。一般的に言えば、死亡しにくくなっているのでよさそうに感じるのですが、実は不顕性感染の時期が長くなり、感染に気が付くのが遅れるという重大な問題があります。

 日本で広がっているCSFも今までのものとは違い症状が非常にわかりにくいという報告がありました。牛伝染性リンパ腫もまったくの無症状のものがたくさんいます。牛ウイルス性下痢症も外見上まったくわからない個体がたくさんいます。マイコプラズマ・ボビスも不顕性感染が非常にたくさんいます。

 激烈な症状がでればすぐに気が付いて速やかに対策をとることができるのですが、不顕性感染の期間が長いとその分対策が遅れてしまいます。そしてじわじわと広がってしまいます。なんかおかしいと思いながらずるずると時間が経過し、やっと気が付いた時には滅茶苦茶感染が広がっており、大ダメージを被る。

 本当に今まで以上に伝染病の対策が難しい時代になってきました。

今週の動画 「Useful items Part 5 役に立つアイテム(その5)」

|