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戸田克樹のコラム
第314話「コクシがいた⑥~総括~」

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2020年12月16日

これまで5回にわたってコクシジウム症を考えてきましたが、繰り返しお伝えしたいのは「コクシジウム(の虫卵)が糞便から検出されたとしても下痢の原因は必ずしもコクシジウムとはならない」ということです。牧場内で検査される際もこの点には気を付けていただきたいですし、外部に検査してもらう際も必ずOPG(糞便1gあたりの虫卵数)まで確認するようにしてください。主となるものがアイメリア・ボビスなのか、アイメリア・チェルニーなのかなど、種類まで確認できればさらに良いですね。

高いOPGが確認された、下痢が複数頭発生した、あるいは数万のOPGが確認された牛がいた場合は敷料交換という投薬以外のアプローチも重要です。

もしひどい下痢をしているのにOPGが低い(数百程度)、もしくはゼロであれば、「その下痢の原因はコクシジウム症ではない」ということになります。ミルクボトルや飼槽自体が汚れていて病原性大腸菌などの細菌感染が起こっているのかもしれません。ロタウイルスやクリプトスポリジウム感染によるものかもしれません。はたまたミルクの温度や濃度、エサの増給量や粗濃比(粗飼料と配合飼料の割合)が不適切なのかもしれません。もしかしたら、配合飼料中のタンパク含有量が多く、消化不良性の下痢を起こしているのかもしれません。敷料中の水分量が多く腹を冷やしているのかもしれません。ひとことに下痢といってもその原因は非常に多岐に渡っているのです。

原因が多岐に渡っているからこそ、基本的な検査は実施しておくことが望まれます。コクシジウムの検査をして虫卵がいない、もしくは明らかに少ないようであれば他の原因を考えます。ロタウイルスやクリプトスポリジウムも検出されなければ、さらに他の原因を考えていくことになります。検査で白黒つけることで本当の原因に近づきます。その結果、適切な治療法や管理法の探索が容易になっていくことは間違いありません。

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