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戸田克樹のコラム
第313話「コクシがいた⑤~投薬以外の治療のポイント~」

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2020年12月9日

下痢の治療を行ううえでもうひとつポイントがあります。それはコクシジウムが下痢の原因であったとしても抗生剤を併用した方がよいということです。コクシジウムがびっしり糞便中にいるのであればサルファ剤などの薬剤でコクシ撲滅に向けた治療は必須です。しかし、それだけでは不十分なのです。

コクシジウム感染でボロボロの腸管環境
重度のコクシジウム感染が起こった腸管内の状態を少し考えてみましょう。コクシジウムは消化管粘膜の細胞内に感染し増殖していきます。感染された細胞は機能破綻を起こしいずれ破壊されていきます。その結果、腸粘膜はボロボロになり、粘膜表面に備わっているバリア機能も著しく弱まっています。つまり、腸管内に生息している多数の細菌が体内(血管内)に侵入しやすくなる=感染が成立しやすくなる、ということなのです。とくに血管に入られると困るのが病原性大腸菌やクロストリジウムです。腸管内をただ浮遊しているだけであれば糞便に出ていくだけなので問題ないのですが、血管内に侵入されると体内で増殖しながら毒素をまき散らし、牛さんの生命を脅かす可能性があるのです。

こうした理由から病原菌感染による二次的な健康被害を抑えるために抗生剤を併用する方が好ましいと考えています。なお、哺乳期の子牛であれば脅威となる病原性大腸菌に効果がある抗生剤を(テトラサイクリン系やキノロン系)、肥育牛は突然死をもたらすクロストリジウムに効果がある抗生剤(ペニシリンなどのβラクタム系)を選択することが多いですね。

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