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戸田克樹のコラム
第312話「コクシがいた④~投薬以外の治療のポイント~」

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2020年12月2日

12月が始まりました!ということはもうすぐ12月が終わって2020年が終わるってことですね。みなさん、今年の師走も駆け抜けましょう!

コクシジウムの治療というのは薬剤投与以外にも重要なアプローチが存在します。それはずばり、「敷料交換」です。

もしOPGが数万以上の数値だった、あるいは下痢や血便が多発している、という場合にはとくにこの作業が重要になってきます。その理由を考えてみましょう。

理由その1:再感染を予防する
糞便中に排泄された虫卵は牛が歩いたり座ったりするたびに糞とともに体表に付着します。その部分を舐めたり、あるいは鼻先で触れたりして口に入れば、そこでまた感染が成立します。つまり、いくら薬を入れようとも周囲の環境がコクシジウムパラダイスであればずーっと症状は良くならない、あるいは感染拡大が止められないのです。

理由その2:水平感染を予防する
先に記載したとおり、糞便中に排泄された虫卵は牛床にとどまります。コクシジウムの虫卵は非常に強く、乾燥や紫外線では死滅せず、さらに消毒薬もオルソ剤しか効果がありません。オーシストは強いのです。

健康な同居牛が下痢便を顔面に受けたり、下痢がついた柵を舐めたり、血便に興味を示してクンクンとにおいを嗅いだりといったタイミングで健康な牛の口にもコクシジウムは侵入してしまいます。そして健康牛もあっという間にコクシジウムに感染してしまい、治療頭数が一気に増える、あるいはなかなか治療頭数が減らないといった危険性が高まります。

これらの理由からOPGが顕著に高い場合や下痢が複数頭続発した場合は早期の牛床交換をおすすめするというわけです。

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