(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
今年、なんか多かったんですよね。子牛の蹄の化膿が。

コラム一覧に戻る

2020年12月14日

 今年はコロナに始まりコロナに終わるという(安倍ちゃんもガースーに変わったけど、こっちはどーでもいいや)、大変な年でしたね。
 でも、牛さんの世界も、冷夏から急に猛暑に変わったり、鳥の運ぶ病気が蔓延したりと、いろいろとトラブルがありました。
 なかでも、子牛では下痢でクスリが効かず、輸血も効果がなく、どんどん体温が低下して死んでしまうという、通常はあまり考えられない症例をたくさん見ました。

 他にも、なぜ?と思ったのが、数ヶ所のコンサル先で経験した、子牛の蹄の中が化膿して腐って蹄が剥がれてしまう、というものです。管理もよい農場が多いのでとても不思議に思いました。以前、エンドファイトによる脱蹄を見たことがありますが、どうもそのときと違って、内部が化膿してしまっているようです。どの症例も片方の蹄が取れてしまってから異変に気づくといった感じで、農場も、診ている獣医さんもしっかりしたところなので、静かに進行しているという印象でした。

 とりあえず、脱蹄の方は化膿性の肉芽を外科鋏で切除して、ペニシリンとカナマイシンを含ませたガーゼで覆いました。もちろん全身麻酔に加えて、前脚には局所麻酔(正中神経)した上の処置です。さてもう片方は?と診ると、こちらも蹄底が軟らかく、内部に膿がある感じでしたので、蹄底から外科鋏で切っていき、化膿している組織をどんどん除去していきました。

 蹄のオペでは中の骨(末節骨)を半分以上削ってしまっても回復します。このことを知っていると思い切った処置ができます。今回も、中の骨を半分ほど除去し、化膿した組織はきれいに削り取って、オキシドールで洗浄し、ペニシリンとカナマイを含ませたガーゼをきつく詰めて、毎日の交換をお願いし、バンテージしました。

 2週間ほどで、かなりきれいな新鮮肉芽が出てきています。17日目からはキトサンガーゼを用いて術創の回復を図っているところです。きれいに回復したら、義足を考えています。

|