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江頭潤将のコラム
No.13 小休止−2

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2020年12月4日

○人工授精の父〜西川義正〜

 少し前のコラムで「人工授精を語る上で欠かせない重要な役割を果たした人物」がいると書いていました。一度お名前も出していましたが、その人物とは日本の家畜人工授精研究の第一人者である西川義正先生です。人工授精に携わる方にはぜひ知っておいてほしい方の一人です。
 西川先生は戦後間もない頃、コペンハーゲンで行われた国際学会に参加されて精液の凍結保存に関するPolgeとRowsonの報告をお聞きになり、日本に帰国された後は和牛精液の凍結保存に関する技術開発を精力的に行われ、わが国の人工授精の発展に尽力されました。
 また、家畜の精液の採取法、検査法、保存法、注入法などの人工授精技術に関する研究でも多くの功績を残されて、現在に至るまでの基礎的な技術を築き上げていかれたそうです。

 西川先生の名前を知ったのは社会人になってからで、精液採取に使う人工腟の部品を購入するためにカタログを眺めているときでした。人工腟の型式に「西川式横取用」とあり、西川さんって誰だろう?と調べ、恥ずかしながらそのとき初めて世界的な権威であることを知りました。
 また、日本家畜人工授精師協会が開催している家畜人工授精優良技術発表全国大会の最優秀賞は「西川賞」といいます。協会のHPには「家畜人工授精技術の発展向上に顕著な功績があると認められる者、または家畜人工授精を通じ家畜改良増殖に顕著な業績をあげたと認められる者」に対して授与するとあり、先生の偉業を長く後世に受け継ぐためであるとされています。
 すでにお亡くなりになられていますが、家畜の繁殖に携わっている身としては一度お会いして研究や技術開発などについてお話をしてみたかったです。
 
 余談ですが、このように自身が開発した器具や技術に名前を残すことができるのはすごく名誉なことだなーと思います。そういう意味では元シェパードの伏見先生が開発した捻転式去勢器243式も世界中で使われるときが来ればいいなーと密かに思っています。

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