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松本大策のコラム
大規模化について考える

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2020年11月30日

 日本各地を回っていると、人間の性質というか、修正みたいなものを感じるときがあります。とくによく思うのが、「規模を拡大したい」という欲求です。
 誰でも、自分が認められたい、誰それよりも大きくしたい、自慢したい、という欲求があります。しかし僕も歳のせいなのか、あるいは経験からなのか、大規模化欲求を原因とする「不幸」がとても目につくようになってきました。

 今の世界の現状を考えてみましょう。コロナの蔓延で各国の製造や流通が変化しています。また地球環境の変化によって、洪水やハリケーン、台風で粗飼料を生産しても、カビや腐敗の被害で製造量が減少したり、あるいは異常高温・乾燥による火災で焼失したりと、粗飼料の供給量が不安定です。
 さらに、中国がコンテナを独占(一部はそのまま保管庫として使用するため、なかなか回転しない)したり、港湾労働者のストライキなどでコンテナが不足したりしており、粗飼料などの中心とする流通もかなりタイトになっています。

 加えて素牛も相変わらず高止まりですし、お肉の価格もなかなか上がってくれません。このまま大規模化していると、たくさんの素牛を寄せ集めなければなりません。系統や発育を選んで、よい素牛をたくさん集めるのは至難の業です。さらに粗飼料にしても、規模の大きな農場ほどたくさん集めなければならない。とすると品質にこだわる事ができず、品質の悪いものにしても与えなくてはならなくなってしまいます。
 そうすると結果的に病気が増えてきたり、生産性が低下したりと不利なことが起こります。資金もたくさん寝かせておかなければならなくなります。

 しあわせな人生ということを中心に、もう一度「適正頭数」という事を考えてみてはいかがでしょうか?

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