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笹崎直哉のコラム
臍ヘルニアの手術~雄~ その1

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2020年11月10日

 趣味ではじめた筋トレですが、休日前夜に追い込みをかけるので翌朝は筋肉痛の地獄を味わいます。早朝は寒いので布団から出たくないという方がいると思いますが、私の場合は筋肉痛がきつくて布団から出られません(泣)。せっかくの休日なのに勿体ないなあ~。

 さて先日のことですが、久しぶりに雄子牛の臍ヘルニアに出会いました。「臍が腫れている」との稟告だったので、臍帯炎、臍膿瘍、尿膜管遺残、臍ヘルニアなどの疾病をイメージしながら触診しました。その結果、臍ヘルニアで私の指が4本分入る程度の穴(ヘルニア輪)が空いていました。診察結果を農家さんに説明をした後、外科手術をすることに決めました。手術を決断した理由は主に4つあります。

①健康な牛さんだった。
→手術の対象となるのは体力のある牛さんです。生後まもない、あるいは肺炎や腸炎を罹患し虚弱体質な牛さんは手術のリスクが大きいです。今回は4ヵ月齢で特に疾病罹患歴もなく発育良好な牛さんでした。

②このまま様子をみていても穴が塞がらない。
→穴のサイズが小さければ経過観察で塞がることがあります。腹巻きやバンテージによる固定法で良くなることもありますが今回は指が4本分入るサイズだったので手術を選択しました。

③臍ヘルニア以外の臍関連疾患がなかった。
→例えば臍帯炎を併発していたら手術により炎症、感染を広げる可能性があるので手術はいったんキャンセルします。その場合、まず先に臍帯炎の治療をします。

④牛さんを個別に管理する環境が整っている。
→牛さんのお腹が張っていると手術は難航します。また手術の術式、方法によりますがその後、飼料を与えすぎてお腹が膨らむと、腹圧がかかり再発する可能性があります。このことから手術前の絶食、その後の飼料給与量をしっかりと調節できる、いわば「個室」で管理できる環境がないと手術を選択しません。

 最後に述べた個別管理に関しては獣医師だけでなく農家さんの日常のお仕事にも関係することなので、毎度具体的に給与量を数値で示すなど丁寧に説明するように心掛けています。

 さて次回は写真を使いながら、実際の手術の流れを説明しますね。
(つづく)

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