2020年10月30日 精液の品質管理についての続きです。 採精直後は精液の量、色、臭気、精子の濃度、活力などを確認します。牛は体の大きさの割に精液量は意外と少なく3~10mlくらいです。その代わり精子濃度は8~15億/mlと比較的高いです。精液量と濃度によって製造することができるストローの本数が決まりますので量が多くて濃度が高い方が作る側としては嬉しいですね。 採精をしていて一番気になるのはやはり精子の活力と生存率です。濃度のばらつきはあまりなかったのですが、個体によっては活力や生存率が結構ばらつく牛がいました。活力は良い順から+++、++、+、±、−の5段階で、生存率は%を数字で表します(例えば90+++という表記は極めて活発な前進運動を行う精子が90%いることを表します)。人工授精に使用するために最低限必要な活力や生存率というものがあり、ストローを製造している人工授精所でそれぞれ基準値が定められているかと思います。以前の職場では採取直後、凍結前、凍結後に精子の活力と生存率をチェックして基準を満たさないものは廃棄していました。 このように、市販されている凍結精液は製造している人工授精所の厳しい基準をクリアしているものなので基本的に品質に問題はありません。凍結精液の品質管理で特に重要なのは、製造者から他の人の手に移った後の管理方法であると思っています。せっかく高品質な凍結精液を手に入れたとしても、輸送や保管、使用する段階で取り扱いが悪いと劣化してしまうことがあります。 |