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下痢を考える(13) |
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2012年2月17日
肥育も進んで中期あたりに差し掛かると、ビタミンAを制限し濃厚飼料も飽食になることで、ルーメンに大きな負担がかかります。あらゆる上皮や粘膜の形成・保護に関わっているビタミンAを制限する事は、ルーメン上皮の揮発性脂肪酸(VFA)吸収能力を低下させることにもつながります。
吸収しきれなかったVFAは、文字通り“酸”としてルーメン内を酸性化し、慢性的なアシドーシス状態にします。その結果、ルーメン内の細菌叢は崩れ、下痢へと繋がります。
軽度な場合は生菌剤やサルファ剤の投与で下痢は落ち着きますが、重症例では40℃以上の発熱と水下痢(尿と見間違うような、まさに水)へと進行する場合もあります。いわゆる「代謝性腸炎」と言われるものです。これは、ルーメン内が酸性化してしまった事によってある種の細菌(グラム陰性菌とわれる種類の細菌)が大量に死滅し、その際に細菌から毒素(エンドトキシン)が放出され、血流に乗って肝臓が傷害される事によって起こります。ですので、別名「急性実質性肝炎」とも言います。
治療法としては、消炎剤のステロイド剤を投与します。発見が早期であれば、どんなにひどい水下痢でも次の日にはモリモリと良い便をしてくれるようになります。
ただし、ステロイド剤の投与だけでは下痢を止めるだけの対症療法にしかなっていないので、再発をする場合もあります。つまり、根本的な解決法は同時にビタミンAを投与する事です。肥育で1年を超えている(生後21~22ヶ月)のであればサシへの影響もほとんどないので、肝炎を悪化させないためにも必ずビタミンAは投与したいものです。また、粘膜の保護という意味では、“亜鉛”も一緒に補給してあげると理想的です。
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