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笹崎直哉のコラム
難産のときに意識すべき点 その1

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2020年10月20日

 繁殖農家さんであれば、難産介助を幾度となく経験されているのではないかと思います。今回は難産で、赤ちゃんを娩出させた後に皆さんに意識してもらいたいなぁと思うことを紹介します。

 ちょっとその前に難産のシーンを想像してみましょう。

 1次破水が終わり、外陰部から足胞がみえ胎仔を確認すると、なんと過大仔。これは滑車の出番だ!と体制を整え、時間をかけて丁寧に引き出してあげました。そして、やっとのこと産まれた赤ちゃん。どうしても「元気かな?顔をあげるかな?立つかな?」とついつい赤ちゃんばかり意識してしまいがちですが、母牛のチェックも忘れないでください。

 では、具体的に母牛に対してどんなアクションが必要なのでしょうか。
 それは「もう一度産道内に手を入れてみること」です。
 指先から腕までしっかりと洗浄し、清潔な状態で傷つけないように慎重に操作してくださいね。この操作には大きく分けて2つポイントがあります。1つ目はしっかりと奥まで手を入れて、もう1頭胎子がいるかどうかを確認して下さい。分娩のときは双子の可能性があることを毎度頭の片隅に入れておきましょう。

 2つ目は産道の損傷状態の確認です。胎仔が産道が通過する際に、胎子のサイズが大きいほど産道を圧迫しやすいので、膣や外陰部の粘膜が裂けた結果、裂創ができてしまう恐れがあります。

 産道の損傷は感染症を招く可能性があり、母牛のその後の繁殖成績を悪化させる可能性があります。

つづく

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