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松本大策のコラム
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2020年10月5日

 みなさんはヘモフィルス症ってご存じですか?昔はヘモフィルス・ソムナスと言われていた細菌による脳神経の病気です。今は、「ヒストフィルス・ソムニ」という名前に変わっていますが、通称はヘモで通ります。

 正式な病名は「伝染性血栓塞栓性髄膜脳炎」という難しい早口言葉みたいな名前です。
 今では、優秀なワクチンを競り市前に打つようになったのでほとんど見かけなくなりましたが、症状は牛さんが突然倒れて痙攣し、首を後ろに曲げたような姿勢や四肢をバタバタ動かすような状態になったり、あるいはほとんど暴れることもなく死んでしまう、という病気です。

 僕が獣医師になった頃(今から30年以上前で恐竜がいた頃です)は、共済組合の死亡・廃用事由のトップがヘモか尿石症でした。朝から夜中まで、時を選ばず「牛が倒れた!」という稟告で走り回って、必死で治療しても治癒は6割行かない程度でした。

 なぜここでヘモのお話をしたかというと、若い獣医さんや牛飼いさんはほとんどヘモを見たことがなくて診断がつきにくいこと、それからワクチンで抑えられてはいるものの、昔のヘモとは違う形で発症する牛さんがたまに出ることを心配してです。
 教科書的には6ヶ月齢以内では発症しないとなっていますが、生後1ヶ月齢以内でも発症することがあります。昔はアンピシリンが特効薬でしたが、最近耐性菌も出ています。

 もしも発症牛を見つけたら、できるだけ早くデキサメサゾンとエクセネルを静脈注射(筋注のクスリですが、獣医さんの使用や出荷制限指示書があれば効能外使用ができます)し、その後きちんと血管確保して点滴にビタミンB1、B6、B12を混ぜたもので神経賦活を図ってあげる必要があります。

 診断の基準としては、眼球振盪や間代性痙攣、起立不能、第一胃運動の消失、発熱などです。最近少し増えてきた気がするのでご注意下さい。

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