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2020年9月28日

 ここのところ、子牛の急死が続いていた農場で意外な犯人が見つかりました。
 正直言って、「発見が遅いのではないか?」とか「薬剤のアナフィラキシーショックか?」など、いろいろなことを推測していたのです。

 しかし、突然死した子牛のビデオを送っていただいたところ、以前から何かあって痩せていたわけでもありませんでしたし、脱水を思わせる症状も見られませんでした。

 家畜保健衛生所で解剖していただいたところ、その死因が判明しました。なんと「乳頭糞線虫!」これは1970年代後半に鹿児島で見つかった寄生虫で、子牛が突然死するので、「子牛のポックリ病」とか「奇病」と呼ばれており、その原因が乳頭糞線虫の大量寄生に伴う心室性不整脈(心不全)だったのです。現在でも、なぜこの寄生虫で心室性不整脈が起こるか、はっきりしたことは解っていません。


乳頭糞線虫 農研機構のHPより)

 しかしイベルメクチン製剤(アイボメックなど)が開発されてからは、すっかりなりを潜めて、もう獣医師国家試験の問題でお目にかかる程度だったのです。
 生後20日くらいでのイベルメクチンとバイコックスやベコクサンによる駆虫はお約束になってしまっていたので、この農場における乳頭糞線虫の被害は全く頭にありませんでした。

 しかし、死んでいくのは生後2ヶ月齢くらいの子牛で、イベルメクチンの効果は切れています。それに駆虫をするのはハッチで、死亡子牛が出るのはその後に移動した育成舎でした。

 でも、どこから乳頭糞線虫が侵入したのか解りません。一つ疑っているのは、作業員の長靴です。ここは、乳肉複合経営ですから、酪農の母牛から子牛をETやAIで生ませます。そして生まれた子牛は、酪農の作業員がハッチに連れてきますし、その際育成舎が取り込んでいたら手伝ってっくれる事もあります。
 もし、虫卵を持ち込むとしたらその際か、ハッチから育成舎に移動する際に母牛担当が手伝いに来ていたのかもしれませんから、そのときくらいしか思いつきません。

 とりあえず、いまその農場へコンサルに向かっているところです。原因がはっきりしたらご報告します。現在、子牛全頭にイベルメクチン投与し、敷料交換と石灰乳塗布をしてもらい、乾乳の母牛にもイベルメクチンを与えてくれるように指示しました。
 それから、各牛舎間の移動時には長靴の徹底洗浄を手を抜かずに実施するようにお願いしてあります。

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