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蓮沼浩のコラム
第636話:内臓は疲れている

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2020年10月1日

 最近はだんだん寒くなってきました。そして日も短くなってきました。季節の移り変わりですね。体調管理をしっかりとしたいと思います。

 先日行われたある枝肉共励会の成績をみると、本当にレベルの高い成績がこれでもかというぐらい出ていました。BMS12のオンパレードです。小生が獣医師になったころと比べると世界が違います。それほどまでにあらゆる面で肉用牛の技術革新が進んでいます。
 ただ、小生は獣医師なので他の項目にどうしても目がいってしまいます。その項目は何かといいますと・・・・

 「内臓疾患」になります。

 高品質の枝肉を作るためにはどうしても肥育牛の内臓に負担がかかります。ある意味肥育牛の宿命のようなものかもしれません。今回の結果も如実にその現実を突きつけてきます。出品された肥育牛134頭のうち、何かしらの内臓疾患が認められた牛さんの頭数は103頭です。なんと出荷された牛さんの76.9%の内臓になにかしらの影響がでていることになります。

 それでは肥育牛の内臓疾患にはどのようなものがあるのかみてみましょう。

 ・三胃炎
 ・四胃炎
 ・肝膿瘍
 ・鋸屑肝
 ・肝炎
 ・肝胞膜炎
 ・肝出血
 ・腸炎(小腸・大腸)

 肥育牛はこれらの内臓疾患といつも隣り合わせで生きています。小生は現場で肥育牛を診療するとき、いつもこれらの診断名が頭をよぎります。農家さんから稟告を聞くときも、エサを食べない牛さんの前に立った時も、左右膁部を聴診している時も、いつも上記に挙げた診断名などが頭に浮かびます。
 今回の共励会の結果では肝臓に何かしらの問題があった牛さんは全体の42.5%。小腸に問題があった牛さんは全体の44%。この数字を多いとみるのか、少ないとみるのか。疾病を予防することが何にもまして大切であるといつも思っている小生は、素晴らしい肥育成績のデータの前で何も言えずに沈黙するのみ。ただ、優勝と準優勝した牛さんに内臓疾患はありませんでした。

今週の動画 「Ruminal acidosis ルーメンアシドーシス」

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