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蓮沼浩のコラム
第634話:寛解

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2020年9月17日

 とにかく地味にやることが多く、時間を捻出することが難しくなっています。このような時こそ、隙間時間を有効に使ってどんどんやるべきことをやり、自分の時間を作っていきたいですね。意外と探せば時間はあります。

 皆さんは「寛解(かんかい)」という言葉を聞いたことがありますか?この寛解という言葉は英語ではRemissionといいます。そして意味はといいますと・・・

 「病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態。または見かけ上消滅した状態」

 小生たち獣医さんは、もちろん病気の牛さんの治癒もしくは完治を目指して診療をおこなっているのですが、残念ですがすべての病気を治すことはできません。例えば一度肺炎になってしまった子牛。外見上は元気に餌を食べて、特に臨床症状もないが、聴診をすれば異常な肺音を聴取することができる事例は多々あります。この場合、過去に肺炎に罹患(りかん)したけど、寛解している状態であると判断します。

 種雄牛の診療でもこの寛解という概念は非常に重要です。脂肪壊死症や関節炎罹患している場合。簡単には治りません。治療は非常に長い時間がかかります。長期的視野で臨床的にコントロールしながら診療を行わなくてはいけません。いかにして安定した採精ができる寛解の状態にもっていくのか。獣医師としてとても気をつかうところです。

 小生は中耳炎、肺炎、関節炎、骨軟症、蹄葉炎など慢性化しやすい疾病の場合、とくに寛解を強く意識して診療をしています。いかにしてその状態の中で牛さんの能力を最大限発揮できるようにしてあげるのか。非常に難しいときもありますが、長いお付き合いを覚悟して取り組んでいきます。

 一番重要な点は、寛解は治癒ではないということ。治ったと勘違いしないことが重要です。再発する可能性はもちろんあります。慢性疾患の場合は定期的な再診が非常に重要です。シェパードではもちろん再診を重要視しています。寛解している牛さんの状態をうまくコントロールできているのか。そして、寛解から治癒に向けて状態が改善してきているのか。寛解という概念を理解して、実際の臨床現場で戦っていくことは非常に重要なことだと考えています。

今週の動画 「Ausculation ( Respiratory system ) 呼吸器の聴診」

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