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松本大策のコラム
とにかく冷やそう!

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2020年8月17日

 今年は海水温の上昇が見られないため、台風の発生も少なく冷夏の模様です。なんて誰が言ったんだこのヤロー(怒)。ってわめきたくなるくらい暑い日が続きますね。僕のところにも各地から「子牛の熱が下がらない」とか、「肥育牛が餌を食べない」とか、繁殖牛では「種がとまらない」という相談がたくさん来ます。

 繁殖牛はおいておいて、まず、子牛と肥育牛ですが、熱があって肺にゼーゼーという音が聞こえて…。と、まるで肺炎のようですが、この暑さの影響で熱中症になっている牛さんがかなり見られます。体温も高いときは42℃なんていう子もいます。熱中症になると、心臓も弱って、肺に送り出した血液がまた心臓に戻るまでの力で拍出できなくなり、肺で血管から水分がしみ出して「肺水腫」という状態になるのです。

 これと肺炎の見分けはなかなか難しいのですが、とりあえずは冷やしてみましょう。人間だって熱が出たらデコデコクールとか冷えピタを貼って熱を下げようとするじゃないですか。子牛の場合42℃の熱がある子を、冷たいシャワーで後頭部から徐々に後ろ側まで全身をしっかり冷やした後、タオルで吹き上げてやるだけで熱も下がり、夕方からミルクも飲むくらいに回復することが少なくありません。こういった典型的な熱中症の子は、これでよいのですが、やはり肺炎の可能性も全否定できません。僕は、遠隔で相談や診療をしていますから、そこはなおさらです。

 そこで、肺炎の治療はきちんとやりながら熱中症にもきちんと対応するという方法をとってもらっています。脱水や血液の色が黒い(呼吸性アシドーシスなど)の場合は重曹注やリンゲル、生理食塩水、ビタミンB1、などの点滴もお願いしています(実は、遠隔診療で一番の問題となる「聴診」を遠隔でできるように、録音して僕のコンピュータに音声やデータを送ることのできるスーパー聴診器を買っちゃいました。明日からコンサル先で試験に入ります)。

 肥育牛もこの暑さでは熱中症もしくは予備軍となっている子が多く、よく見ると口によだれを垂らしていたり、呼吸が速かったり体温が上がっていたりします。こういう子も冷やして、補液するととても元気になります。
 繁殖牛の場合も、環境温度が高すぎると、体の深部体温が上昇し、熱に弱い精子が死滅してしまいます。これを防ぐには、やはり人工授精前に水で十分冷やしてあげることです。水で冷やした後は、タオルでしっかりと吹き上げてあげましょう。そうでないと水を含んだ被毛が断熱層となって後々うつ熱で体温が上がります。

 コンサル先の農場では、熱中症の子牛を水で冷やした後、タオルで拭いて、その後に乾燥させるために「乾燥装置」を作ってくださいました。

 とてもよいですよ。

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