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笹崎直哉のコラム
手術器械について学んでみよう⑦

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2020年7月21日

 先日繁殖農家さんを伺ったとき、子牛にオシャレなものがつけてありました。

 そうなんです。まさかのネクタイです。どうやら使わなくなったものを子牛の首輪として代用しているようです。ネクタイをしめて優雅に走り回る姿は絶景です。オシャレだな~。

 さてもうだいぶ手術器械を紹介してきました。今回はまとめコラムとして手術をする前に私が気をつけていることについて話したいと思います。手術前で一番大事なのは、手術前の牛さんやその他環境状態を把握することです。現場の手術だと牛さんの状況はもちろん、部屋のスペースや構造、敷料、気候などの条件もあるので、その中からベストな状態を作ることが重要です。

 例えばとある牛さんが難産で経膣分娩できず、その結果帝王切開になったことを想定します。手術前のチェックポイントとして

 ①部屋の状態・・・十分なスペースがあるかを確認して、敷料の量や汚染状態に問題がないかチェックします。また扇風機が稼働している場合、埃が舞ってしまうので、止めるか弱に設定してもらいます。
 ②気候・・・雨や風が強くないか、もし悪条件なら牛さんを移動し部屋を変更します。
 ③牛さんの状況・・・起きれない場合はそのまま足を固定し、寝かせた状態で手術。立っていても、蹴り上げてきたり、気性が荒く、興奮している場合は無理せず寝かせてあげた方がいいかもしれません。そのまま起立位で進めると手術が難航する可能性が高いです。

 ちなみにタオルで目隠しをしてあげたり(落ち着かせるため)、急に座ってしまう可能性を考えて、術創と反対の後ろ足にロープをかけておく(術創が床面に触れないように座らせるためです。例えば左けん部切開なら右後肢をロープでつないでおきましょう)ことはお勧めです。またどんな手術でも専用のOPE台があると円滑に進められます。とってもお勧めです。

 今までは放牧場で起立不能になってかなり弱っている分娩末期の牛さんに対し、帝王切開を実施したことがあります。天気は曇り。牛さんを移動したり、簡易的に屋根をつくることが出来なかったので、雨が降らないように願いつつ手術しなんとか子を助けることができました。現場での手術はいろいろな状況があるので判断に迷うことが多いです。その中でベストなやり方を選択していくことが重要です。

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