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蓮沼浩のコラム
第626話:代替肉(だいたいにく)その6

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2020年7月16日

 日本も大変ですが、中国長江流域の洪水もすさまじいです。被災者3800万人。想像を絶するレベルです。
 
 
 代替肉についていろいろと調べていると、ふとある考えが頭をよぎりました。

 この「代替肉」というものは、もしかしたら肉用牛業界の「破壊的技術」になるかもしれない・・・

 この「破壊的技術」という言葉はハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授が提唱している概念になります。小生の愛読書でもある「イノベーションのジレンマ」という本の著者になります。この本はある意味非常に恐ろしい本になります。それは「優秀な企業が何故失敗するのか?」という原因について、一生懸命取り組んだ技術革新が結果として巨大企業を滅ぼす原因になることを詳細に述べているからです。

 肥育技術を含め、あらゆる新技術のほとんどは今までよりも性能を高めるものになります。これは「持続的技術」と言われ、主要市場のメインの顧客が今まで評価してきた性能指標に従って、既存製品の性能を向上させる技術になります。農家さんや技術員さん、そして獣医さんや製薬メーカーさんなどあらゆる肉用牛関係者の方々はこの「持続的技術」を向上させようと日々精進しています。しかし、クリステンセン教授はこのように話します。

 「企業が競争相手より優れた製品を供給し、価格と利益率を高めようと努力すると、市場を追い抜いてしまうことがある。顧客が必要とする以上の、ひいては顧客が対価を支払おうと思う以上のものを提供してしまうのだ」

 「製品の性能が市場の需要を追い抜く現象が、製品のライフサイクルの段階を移行させる最大のメカニズムである」

 もしかしたら和牛のお肉はこのイノベーションのジレンマに陥っているのではないか?

 「破壊的技術」は短期的には製品の性能を引き下げる効果を持つイノベーションになります。しかし、従来とは全く異なる価値基準を市場にもたらし、最初は主流から外れた少数の、大抵は新しい顧客に評価される特徴があります。「破壊的技術」は新しい市場を生み出していくのです。

 小生は持続的イノベーションと破壊的イノベーションの影響を表すグラフに「和牛の肉」と「代替肉」を試しにいれてみました。もちろん小生の勝手な推測になります。しかし、まじまじとこのグラフを眺め、過去の様々な製品に思いをはせると、このグラフの持つ真理を垣間見ることができます。

 本を片手に大豆ミートのキーマカレーを食べながらいろいろと考えてしまいました。興味のある方は是非一読をお勧めします!

今週の動画
「代替肉 Fake meat 」

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