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松本大策のコラム
カラスめーっ!

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2020年7月13日

 各地で大雨の被害が出ていますが、皆さんのところは大丈夫ですか?被害に遭われた方々が一日も普通の生活に戻れるようお祈りしています。また、亡くなられた方々のご冥福をお祈りしています。

 ところで、最近カラスも増えていますね。雨が少しでも上がると牛舎に来て餌を食ったり、糞をしたり、本当に迷惑なやつです。

 カラスは、血便の原因となるクロストリジウム・パーフリンゲンスというばい菌を運んだり、牛が口や肛門から出血して突然死して、時間が経つと皮下に空気がたまってパンパンになってきたりする「悪性水腫」の原因となるクロストリジウム・セプティカムを牛舎に持ち込んだりします。
 それだけでなく、あの有名な「ボツリヌス菌」まで持ち込むことがあります。ボツリヌス菌もクロストリジウム菌の1種なのです。ボツリヌス菌の症状は、下痢して後肢から震えて力が入らなくなり、起立不能に陥り、さらには体温が低下して死に至る、というやっかいなものです。

 これらを防ぐためには、「防鳥ネット」で牛舎全体を囲うのが最も確実です。テグスを張り巡らせるのも効果がありますが、いずれにしろ隙間があるとカラスは頭がいいのでそこから入ってきます。
 防鳥ネットを張るとき、忘れてはいけないのが「飲水タンクの上などにもカラスが入れないようにする」ということです。以前鹿児島の大規模牧場で、飲水タンクの上が、がら空きだったので、それを塞ぐまで被害が続いたことがあります。

 これらの病気が多発するようなら、それぞれのワクチン(下痢五種混ワクチンや嫌気性5種混合ワクチン、キャトルウィンBOなど)を打つのも一つの手段ですが、いずれにしろ100%病気の発生を抑えるワクチンはありませんから、カラスの侵入だけは防がないといけません。

 あと、ワクチンで防ぐことができないのが、カラスによる咬傷(つついて傷ができどんどん内部から腐ってひどくなる)です。写真の子牛も、元気そうですがコンサルの巡回時に処置を依頼されたときには、すでに肩甲骨の内部まで腐っていて、型から前足が取れる状態でした。
 こんな悪いことをするカラスを一網打尽にする方法はないものですかね。

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