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笹崎直哉のコラム
手術器械について学んでみよう⑤

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2020年7月7日

 オンライン英会話レッスンを始めて2ヵ月が経過しました。昔は外国人の方とお会いしたときは「え!どう話かければいいんだ!」とパニックでしたが、先日たまたま公園でウォーキングしていた外国人でお会いしたときは自分から話かけて最後は笑顔でお別れしていました。日常会話レベルのコミュニケーションでしたが、楽しかったです。

 さて今回の手術器械はこちらです。

 套管針(とうかんしん)と呼ばれるものです。手術器械という枠に入れていいのか迷ってしまう器械ですし、「え?手術のときに使うの?套管針といえば急性の鼓脹症でガスを抜くときにつかうイメージだ」と疑問に思われがちです。頻繁ではありませんが、術中で使うこともあります。今までは帝王切開術でお母さん牛を横臥位(横になって寝ている体勢)保定にしたときに使いました。具体的にいうと皮膚~腹膜までの切開を終え、腹腔内にある子宮を探しているときに、ルーメンがそれを邪魔したため、套管針でパンパンに張ったルーメンのガスを抜きました。よく考えてみれば牛さんはルーメン内で発生した炭酸ガスやメタンガスを曖気(ゲップ)で出すのに、横に寝てしまっているわけですから曖気で抜こうにも抜けません。ガスが溜まっていく一方です。ガスさえしっかりと抜ければ、驚くほど子宮の操作は容易になります。ガスでルーメンがどんどん張ってしまえば、お母さん牛の呼吸が苦しくなってしまうので一石二鳥だったかもしれません。当時は套管針に救われたといっても過言ではありません。

 カバーを外せば、分かるように針先は尖っていますので取り扱いには十分注意です。刺すときは躊躇せずにしっかりと1発で刺します。意外と力がいりますが、しっかりと刺せれば外套の直径は大きいのであっという間にガスが抜けます。

つづく

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