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笹崎直哉のコラム
手術器械について学んでみよう③

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2020年6月23日

 皆様お疲れ様です。最近は蒸し暑い日ばかりですね。今後も梅雨が続きますので、体調管理しっかりしていきましょう。ちなみに私は梅雨よりも夏本番が怖くてたまりません。

 さて鉗子シリーズですが、一番サイズが大きく存在感のある①は帝王切開で使います。これは帝王切開で胎子を出した後、子宮が母牛の腹腔内に逃げてしまわないように保持したり、子宮の縫合で役立ちます。子宮はカーゼを介して手で保持することもできますが、結構大変なのでこの鉗子にはいつも助けれらます。先端もすべらないように工夫されています。

 ②は腹膜鉗子です。基本は腹膜の縫合の際に2本使います。長く、器械の先端も曲がっているタイプです。腹膜は筋膜や筋組織に隠れてしまうことが多く、保持が困難ですので、この鉗子でしっかりと腹膜の位置を捉えて保持するようにしています。

 ③は今回の鉗子シリーズの中で一番小さいタイプですね。タオル鉗子と呼ばれ、術創周囲を覆うドレープを固定するために使います。ドレープと皮膚を巻き込むため先端が鋭利になっています。でも皮膚を巻き込むとなると牛さんが痛がってしまうので、術前のドレープの固定にはこの鉗子を使わずに接着剤で代用することがほとんどです。もちろんタオル鉗子を使うことがあります。例えば牛さんが術中に座ってしまったりなどの緊急時の取り急ぎの対応で術創の感染や汚染を防ぐケースです。すぐさまドレープで覆った後タオル鉗子で固定します。この鉗子はいつも6本程常備するようにしています。

 ④は先端が今までのタイプと異なり大きいタイプですね。細かく、小さい組織の操作には向いていませんが、ケースバイケースで④で組織をつかみ、牽引したりすることがあり必ず1本は常備しています。

つづく

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