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松本大策のコラム
「肺炎の防除のお話4 免疫とワクチン1」

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2007年1月20日

 肺炎の病原体の1つ、ウイルスをやっつけることができるのは動物の免疫(抗体)でやっつけるしかない、というお話しをしましたが、免疫抗体というのは、動物がばい菌の感染を受けたときにリンパ球で作り出す物質で、タンパク質の一種(γグロブリン)です。

 この免疫を、動物が感染する前に作らせておこうというのが、ワクチンの働きです。いろいろなウイルスや細菌に対していろいろなワクチンが作られています。しかしながら、ワクチンは、そのワクチンに対応した病原体にしか免疫抗体を作ることはできません。たとえばRSウイルスに対するワクチンは、他の細菌やウイルスには効果がないのです。

 現場でよく使われている肺炎のワクチンの代表的な物にストックガード5(共立製薬)と肺炎5種混生ワクチン(京都微研)があります。これらは複数のウイルス(どちらも5種類:京都微研に6種類対応の不活化ワクチンもあります)に対応しています。ストックガード5は不活化ワクチンといって、ウイルスを失活させてあるもので妊娠中の牛さんにも接種できますが抗原量が少ない(免疫を作るためのウイルス量が少ない)ため3週間程度の間隔で2回接種しなければなりません。2回目の接種で免疫抗体のレベルが跳ね上がるので、これをブースター効果といいます。ブースター効果を得るには、2回のワクチンの間隔を3週間から1ヶ月程度に保たないと、あまり間隔が空きすぎては効果が得られません。一方、肺5種混生ワクチンは、名前の通り生きたウイルス(病原性は弱らせてあります)を使用していますから、通常1回の使用で免疫抗体ができるといわれています。しかし、生きたウイルスが入っているため、妊娠中の母牛に打つと、BVD−MDウイルスが胎盤を通って子牛に感染してしまい、子牛が一生BVD−MDウイルスへの免疫をもてない状態になる場合があります。

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