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松本大策のコラム
「肺炎の防除のお話3 肺炎の原因その3」

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2007年1月18日


 さて肺炎の直接の原因である病原体にお話を戻しましょう。ウイルスというのは、遺伝子(DNAとRNAの2種類があります)だけの塊で、生き物としての代謝系(食べたり飲んだり分解したりエネルギーを生み出したりする生き物としての働き)を持っていません。宿主特異性といって、とりつく動物が決まっていて、牛のウイルスは牛以外の動物に感染することはあまりありません(中には宿主域の広いウイルスもいます)。ウイルスは遺伝子をとりついた動物の細胞内に侵入させて(いわゆる遺伝子組み換えみたいな感じ)、とりついた生き物の細胞を乗っ取ってそこでいろんな代謝をさせて自分の遺伝子を増やしていきます。誤解が多いのですが、ウイルスには抗生物質は効果がありません。あくまでも動物の免疫(抗体)でやっつけるしかないのです。
 細菌やマイコプラズマ(以前のコラム参照)というのは小さな生き物で、肺炎の場合は、牛さんの眼・口・鼻などから感染し、粘膜の細胞にくっついて悪さをします。細菌は抗生物質でやっつけることができます。ただ、細菌によって効果のある抗生物質が違うので、獣医さんはいろいろと薬を変えてみたり(診断的治療といいます)、鼻の穴を綿棒でぬぐって細菌を採取して培養して、効果のある抗生物質を調べたりするのです。細菌も、同じ抗生物質を使い続けると効かなくなることが多々あります。細菌が薬剤に対する耐性を持ってしまうのです。これはダラダラと同じ抗生物質を使い続けた場合に起こります。ですから同じ抗生物質は3日程度で一旦使用を中止し、数日おいて再度使用する(パルス方式)方が安全です。もし休薬虫も抗生物質が必要と感じたら、別の系統の薬をその間使用します。
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