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松本大策のコラム
この時期の飼料の注意

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2020年6月15日

 つい先日まで、寒い寒いと言っていたのに、もうジメーっとした梅雨。むしむしして寝苦しいですよね。先日出張から帰ったら、2階の寝室の窓を開けっ放しで出てて、大雨が降り込んでベッドがジュクジュクでカビくさくなっていました(涙)

 ところで、この時期だからこそ気をつけないといけないことがあります。まずこの時期の子牛の下痢はウイルスよりも「食中毒のようなバイ菌」によるものが増えること、それに関連して飼料に注意が必要なこと、です。今回は、この「梅雨時期の飼料への注意」について考えてみたいと思います。

 まず、餌を与える前に、しっかりとその餌を眺めてみましょう。僕もコンサルの時は老眼鏡かけてしっかり見るようにしてますよ。ちゃんと見るとカビが生えているかどうか解ります。僕が見た限り、意外にみなさん見落としています。


写真1


写真2

 カビが見つかったら、その餌はあきらめて捨ててしまいましょう。「カビ毒吸着剤」というのも、目に見えていないレベルのカビの毒には対応できますが、明らかに見えているものに対しては、圧倒的に無力です。

 カビにもいろいろあって、「白カビはコウジカビだから大丈夫だ」と考えている方が多いのですが、コウジカビは、白いカビ(アスペルギルス属)の中の「奇跡的な善玉」です(写真2)。白カビの仲間が出す「アフラトキシン」は、最強の発がん物質の一つですし(写真3、4)、急性毒性もふぐ毒の3倍!という恐ろしいものです。それから白カビの一種である「アスペルギルス・フミガダス」は、牛出血性腸症候群という血便の原因になります。いまだに血便を見ると「コクシだコクシだ!」と騒ぐ方がいますが、コクシジウムは軟便や普通の下痢の原因であって「血便はしません!!」。血便の原因の第1はクロストリジウム菌、そして栄えある第2位が、このカビなのです。そして、このフミガダスというカビは、カビ毒ではなく「カビそのものが腸管に生えることが原因」なので、カビ毒吸着剤は全く役に立ちません。


写真3


写真4
すみません、これ誰かの写真です。だれのか忘れて(^_^;) ごめんなさい。

 その他にも、カビ毒の一種「フザレノン」は、繁殖母牛にとって大きな繁殖障害の原因になります。フザレノンは発情ホルモンのエストロジェンと同じ働きを持つので、いくらつけても疑似発情が来て受胎しなくなるのです。3日おきとか7日おきとかに不定期発情が来るようならこれを疑いましょう。

 カビだけでもこんなに問題があるのですが、もう一つは「収穫後に雨に濡れると植物内で硝酸塩が増える」という問題も忘れてはいけません。硝酸塩中毒についてはみなさんご存じの通り、軽傷から重傷にいたるまで様々な問題を起こしますから注意しましょうね。

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