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池田哲平のコラム
「「下痢を考える(10)」」

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2012年1月27日

 ミルク以外の飼料(濃厚飼料+粗飼料)が原因になって下痢になることもあります。

 成長とともに骨格や各器官が発達してくると、飼料の要求量もどんどん増えます。しかし、その与える飼料の中身や粗濃比(粗飼料と濃厚飼料の割合)はウシの発育のステージによって変わります。

 哺乳期〜育成前期(生後4〜5ヶ月)において、消化器官のシステムはまだまだ反芻動物のものにはなっていません。微生物発酵によって出来た揮発性脂肪酸(VFA)を吸収する第一胃の粘膜面、特に絨毛は未発達です。この時期に硬い繊維質の草をメインに食べてしまっても有効に消化・微生物発酵できず、下痢の原因となります。そればかりか、せっかく出来てきた第一胃の絨毛をガシガシ傷つけてしまって、絨毛を短く切り刻んでしまう事もあります。これではいっこうに第一胃絨毛は発達せず、VFAの吸収が出来ません。当然ウシの発育は悪く、下痢しやすくなります。

 この時期は固形飼料(スターターや育成飼料)をメインに食べさせ、それから出来るVFAの化学的刺激によって絨毛を発達させなければいけません。粗飼料によってチクチクと物理的刺激を与えることで腹作りしていくのはもう少し後の方になります。粗飼料は柔らかいもの(チモシーの穂の部分など)を少量、特にまだミルクを飲んでいる子牛ではひと握りくらいで十分だと言われています。

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