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笹崎直哉のコラム
久しぶりの尿石症 ~抜糸~

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2020年6月2日

 前回紹介しました尿石症の症例で尿道バイパス手術を実施した牛さん(元気にしてますよ~)が、術後10 日になり抜糸を行いました。「あれ?吸収糸じゃないの?」と思う方いると思います。皮膚縫合は「ガッチリ皮膚同士をよせて、強く縫合する」ことを意識しています。テンションでパックリと術創が開いてしまう(開放創)のを避けるためです。今回も非吸収糸を選択し水平マットレスでしっかり縫い合わせました。ナイロン糸か絹糸を使いますがより縫合の強度を大きくしたい場合は絹糸にします。今回はナイロン糸にしました。

 さて、抜糸は大事なポイントが1つあります。
術創に糸を残さないこと」です。そのためにはしっかりと縫い目を精査しなければなりません。

 以下のように

 糸がリング状になっていますが、その1ヶ所を剪刀で切るようにします。2ヶ所切ってしまえば、糸が残ってしまいます。これにより、その後の炎症や化膿の原因になります。なので、作業を妨害するようなリスクを無くし(尻尾を結んでおきましょう)、場合によってはピンセットなど器具を使って慎重に行いましょう。

 今回は3糸でしたが抜糸が終わったら、やり残しがないようにもう一度見直しをします。

 その際、術創が化膿していたり炎症があれば獣医さんに相談して、みてもらいましょう。私の実体験でそういった場合はペニシリンなど抗生物質の塗布を少量でいいので、数日間してあげれば回復が早くなるケースがありました。

 今回に限らず手術は術後経過も重要ですので、その後の牛さんの症状や部屋、床の状態などしっかりチェックしていきましょう。

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