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松本大策のコラム
牛さんの行動とストレスからの病気防止

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2020年6月1日

 世間はようやくコロナの拡大が少し落ち着いてきたようですが、みなさんの牛さんはお元気ですか?

 ところでコンサルテーションで農場に入ると、たいていは「同じ場所」とか「同じような時期(導入からこのくらいとか、生後何日くらいとか)」に病気が発生することが多い事に気づかされます。これは、「その場所」とか「その時期」、あるいは「そのイベント」が牛さんのストレスになっているからです。今回はそのことを少し一緒に考えてみましょう。

 牛さんがストレスを受けると、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)というホルモンが分泌されます。このホルモンは、人間の臓器移植の時に「免疫」の働きで移植臓器が壊されないように、「免疫抑制」をする働きで使われているのですが、牛さんの体内で分泌された副腎皮質ホルモンも、その牛さんの免疫を低下させてしまうのです。

 免疫が低下すると、当然いろんな病原体の感染に弱くなり、肺炎や下痢など様々な病気を発症してしまうのです。しかも、子牛の場合、最近ではマイコプラズマという病原体が多く、コイツに感染されるとさらに免疫の低下が起こり、他のいろんな病原体にまでやられるという「複合感染」を起こすのです。

 それでは、どういう場所や時期、シチュエーションでそういう病気が増えるかというと、たとえば「単飼の自然哺乳の子牛を離乳させて、同じような子牛で育成群を作る」、「哺乳ロボットに生まれた子牛を継ぎ足す」、「個別ハッチの子牛を離乳させて育成群にする」等のケースでは、群れを作る際の人見知りストレス(群編成ストレス)で、3週間は免疫不全に陥ります。
 肥育牛でも、市場から購入した子牛で群を作ってから10日から2週間くらいが、群編成ストレスで免疫低下が起こり、肺炎の発生が増えてきます。
 繁殖の若いお母さん(経産牛は肝っ玉母ちゃんなので、普通はあまり関係ないように思います。)も、群に混ぜてからのストレスで免疫が低下したり、ホルモンのバランスが崩れて受胎しにくくなったりします。

 こういうストレスを防ぐために、僕は群れを作る前日から群編成後2週間はモラフィットSPを1日当たり50gから100g与えてもらうようにしています。この添加剤には乳酸菌の作るGABAが含まれていて、ストレスの影響を受けにくくするのです。人間用にもGABA入りチョコとか売っていますよね。これでストレスの影響を緩和して、免疫低下とか、ホルモンバランスの乱れを予防するのです。大切なのは、「ストレスがかかる前」から与えることですよ。

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