哺乳期を過ぎると、一般的には感染症による下痢はほとんど起きなくなります。これは、初乳からの移行抗体による免疫は生後2ヶ月くらいまで働いていて、生後1ヶ月を過ぎると子牛自身が免疫抗体を作れるようになるためです。発育とともに、免疫系も強くなっていくという感じです。哺乳期を過ぎた後、育成〜肥育における感染症による下痢症としては、コクシジウム症や寄生虫性胃腸炎などがあります。
コクシジウム症は下痢や血便を引き起こす病気として皆さんご存じだと思います。詳しくは蓮沼獣医師が以前紹介していた(第237話−247話)ので、そちらを参照して下さい。
もう一方の寄生虫性胃腸炎は慢性的に下痢を繰り返すことが多い病気です。寄生虫と一言に言ってもその数は非常に多いのですが(厳密に言えばコクシジウムも寄生虫に含まれます)、多くは線虫・吸虫・条虫・鞭虫のことを指します。
駆虫をしたことがないまたは長期間していない牛で、抗菌薬や生菌剤での治療に反応せず、慢性的に軟便〜流泥状の下痢をする牛が多いです。元気や食欲はあるのに、他の牛より発育が悪く毛がボサボサとしている牛がいたときには、寄生虫感染を疑います。確定診断としては、糞便検査で寄生虫の虫卵を顕微鏡で見て確認します。また、血液を顕微鏡で見ると好酸球という種類の細胞が増えていることが多いです。
治療としては各種の駆虫薬があるので、寄生虫の種類に応じて牛に飲ませたり、最近では背中にかけるだけの簡単なタイプのものもあるのでそれらを使います。
生産農家さんでは母牛も含めてプログラムを組んで駆虫を行い、肥育農家さんでは導入時に一斉に駆虫を行ってしまうことをお勧めしています。農場内に寄生虫を入り込ませないためにも、是非行いたいものです。