(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
池田哲平のコラム
「「下痢を考える(6)」」

コラム一覧に戻る

2011年12月30日

 以上はいずれも感染症による下痢であり、特に生後間もない子牛で問題になるものばかりです。子牛の下痢症は腸管内の免疫力を低下させ、結果として全身性の免疫力低下につながります。これは、ウシをはじめとした反芻動物では、全身の免疫機構が腸管免疫に大きく依存しているためです(詳しくは過去のコラム「牛の解剖72−73」を参照ください)。子牛が一度下痢になると最低3ヶ月は免疫力が低下すると報告しているものもあります。
 
 つまり、子牛の下痢症に関しては、「いかに治療するか」の前に「いかに予防するか」ということが大切になってきます。環境改善(敷料、換気、消毒など)、ワクチン・抗菌剤・生菌剤の投与、適切な初乳の給与、などなど・・・、対策の方法は非常に多岐にわたっていていますが、どれもこれも取り入れてやろうとすると、結局訳が分からないことにもなりかねません。
しかし、私は最も重要なことは、“病気に強い(免疫力の高い)子牛を産ませる”事だと思っています。もともとの免疫力が低い子牛の場合は、先に挙げた対策をいくらとっても効果が上がりにくいことが多いからです。

 そして病気に強い子牛を産んでもらうには、分娩前の母牛の飼養管理を適切に行うことが何より大切になります。具体的な方法などは今回のテーマから外れてしまうので他に譲りますが、子牛の発育・成長はお母さんのお腹の中にいるときから始まっているということを意識してもらえると何事もやりやすいと思います。

|