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池田哲平のコラム
「「下痢を考える(5)」」

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2011年12月16日

 一方の吸収不良性下痢を引き起こす腸炎はウイルスを原因とするものが多いです。代表的なものではロタウイルスやコロナウイルスによる腸炎です。どちらも生まれて間もない子牛(生後2週以内)で発症しやすく、特に十分な量の初乳を飲めていない子牛で起こり易いです。
 どの様にして起こるかと言うと、ウイルスが腸粘膜の細胞に感染して腸絨毛にダメージを与えるため、腸絨毛が短くなったり、腸絨毛同士がくっついたりしてしまって、腸粘膜の表面積が小さくなって吸収不良が起こります。陰窩からの分泌はほぼ正常と言われていますが、重度感染では分泌も亢進して、腸粘膜の表面は粘液・白血球・剥がれ落ちた粘膜上皮細胞を含んだ滲出物で覆われます(難しい言葉では“カタル性腸炎”と言う)。

 ウイルス以外では有名なものにコクシジウム感染症があります。こちらも腸粘膜を破壊して吸収不良性の下痢を起こしますが、感染の範囲が広い場合や細菌が二次感染している場合には出血を伴う下痢(=出血性腸炎、いわゆる血便)を起こしたり、粘液の分泌が亢進したりします。

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