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池田哲平のコラム
「「下痢を考える(4)」」

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2011年12月9日

 下痢が起きている時、腸の中ではこのような変化が起きているのですが、下痢を引き起こす感染症の中には、特徴的に分泌性下痢を起こすものと吸収不良性下痢を引き起こすもの、またはその両方を引き起こすものがあります。

 分泌性下痢を引き起こす代表的な病気は、大腸菌による腸炎です。
 
 大腸菌には多くの種類があるのですが、その中でも特に腸管内で毒素を産生する大腸菌が原因です。大腸菌が産生するエンテロトキシンと呼ばれる毒素が腸の陰窩を刺激して、陰窩からの分泌を亢進し、特に生後2週以内の子牛で水様性の下痢が見られます。
 ですが、大腸菌の種類によっては、感染を起こした腸の粘膜上皮までも破壊し、絨毛が著しく短くなってしまい、吸収不良も引き起こします。
 また毒素は毒素でも、エンテロトキシンではないもっと厄介な毒素(ベロ毒素や志賀毒素と呼ばれる)の場合は、陰窩を刺激するだけでなく、粘膜細胞や腸壁の血管内被細胞を直接傷害するので、出血を伴う下痢(血便)を起こす事もあります。

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