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戸田克樹のコラム
第283話「ふたつの血尿⑥」

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2020年5月13日

日中は汗をかく日も出てきました。まずいです。動物の香りと人体のにおいが融合するその時、診療車内の臭気レベルは一気に上昇します。

赤血球が壊れる!?

赤色尿が確認され、それがヘモグロビン尿の場合、「体中で赤血球が破壊されてしまっている」というサインになります。でも、赤血球が壊れるというのはどういうことなのでしょうか。

ピロプラズマとアナプラズマによる赤血球破壊

問題になるのは赤血球に寄生(感染)する病原体(ピロプラズマとアナプラズマ)です。両方ともダニの吸血によって広がっていきます。ピロプラズマ(原虫)の方は大きいバベシア原虫が原因となるバベシア病(大型ピロプラズマ)と小さいタイレリア原虫が原因となるタイレリア病(小型ピロプラズマ)の2種類があります。

では、アナプラズマとは何でしょう。赤血球を破壊するのは同じなのですが、こちらは細菌になります。グラム陰性菌といって、細胞壁をもたないタイプになりますね。細菌ですので治療には抗生剤を投与することになりますね。

これらが寄生(感染)すると赤血球を破壊しながら体内でどんどん増えていきます。その結果、ヘモグロビンが血液中に漏れ出し、結果として血尿になるというわけです。しかし、尿に現れるレベルになった時点ですでに感染や赤血球破壊は重度で、貧血もかなり進行した状態になってしまっています。そこから回復させるのは非常に困難なケースが多いでしょう。それこそ予防に力を入れるのが重要です。対策としてはどちらも「ダニに吸血させない」ことが第一。ダニの駆虫剤を定期的に散布し、吸血されることがないよう予防に努めましょう。

これまで血尿をテーマに書き連ねてきましたが、その原因は様々です。傷や腫瘍の有無、腎機能障害の有無、さらには赤血球寄生(感染)の有無など、原因確定にたどりつくために確認すべきポイントがいくつかあります。真っ赤な尿を見つけたら、びっくりすることなく、落ち着いて原因を探っていきましょう。

おわり

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