(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
池田哲平のコラム
「牛の解剖85:膵臓(1) ~消化のスペシャリスト~」

コラム一覧に戻る

2011年9月30日

 消化管付属器官として、肝臓と同じかそれ以上に大事な働きをしている臓器が膵臓です。

 膵臓は肝臓の尾側にあって、肝臓にくっつく様に位置しています。そして、肝臓と同じように十二指腸へとつながる管が存在し、腸管に膵液を分泌しています。膵臓から分泌される膵液中には、非常に多種類の消化酵素やその前駆体(ぜんくたい;消化酵素の元になる物質)を含んでいます。肝臓から分泌される胆汁が、“脂肪の消化を助ける”という役割だったのに対して、膵液は“蛋白質・炭水化物・脂肪を消化する”という、より消化の本格作業を行うことになります。胆汁と比較して、膵液の担当は脂肪以外にも蛋白質と炭水化物が増え、さらに実際に消化を行います。膵臓はまさに消化のスペシャリストの様な臓器です。

 牛の臨床現場では、膵臓の病気というのはほとんど見られません。他の病気と間違われていたりまだあまり分かっていないだけかも知れませんが、私が診療してきた牛で、膵臓が原因だと診断した牛は未だにいません。元気に働いているのが当然として見られる臓器なので、肥育の世界ではあまり注目されない臓器であることは確かですが、実は肥育の成績にも関わる大事な働きが別にあるのです・・・(続く)

|