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池田哲平のコラム
「牛の解剖84:肝臓(8) ~消化を助けるだけじゃない~」

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2011年9月16日

 以上のように、肝臓は脂肪の消化に大変重要な役割を果たしていて、そして、それを効率よく行うための素晴らしい仕組みがあります。ですが、脂肪に限らず、食べ物は消化されただけでは体のためになりません。消化の後には必ず「吸収」が必要であり、そうして初めて消化された食べ物は体に有益に働くスタートに立つことが出来ます。実は、肝臓はここでも非常に重要な仕事をしています。
 肝臓は、吸収された栄養分をさらに変化させて本当に体に使える形にするという、消化・吸収の総仕上げの様な役割も果たしています。代表的なものとして、揮発性脂肪酸(VFA)やその他の脂肪酸(&時にはアミノ酸)は、肝臓の中でグルコース(ブドウ糖)に最終的に形を変えられて初めて全身のエネルギー源として利用できるようになります。つまり、肝臓が正常に働いていないと、消化・吸収が上手くいっていても体を動かすエネルギーは上手く作られないという事になります。

 まだまだ暑い日が続きますが、こう言う時ほど肝臓は疲労しています。俗に言う“夏バテ”というのは肝疲労の事なので、この時期、特に肥育中期〜後期の牛には秋以降の餌食いの安定のためにも強肝剤を投与してあげましょう。

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