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池田哲平のコラム
「牛の解剖83:肝臓(7) ~胆汁酸と腸肝循環~」

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2011年9月9日

 ビリルビンはこのように、胆汁を介して体外に排出される物質ですが、その一方で、胆汁中の成分には何度も再利用される物質もあります。
 以前に紹介したとおり、肝臓で作られた胆汁は胆嚢を経由して十二指腸に分泌されて、腸管において脂肪の消化を助けます。胆汁に含まれる成分の中で、この脂肪の消化を助けるのにメインに関わっている成分が「胆汁酸」と呼ばれるものなのですが、この胆汁酸は腸管で再吸収されて、血液に乗って再び肝臓に戻ってきます。そしてまた肝臓から胆汁として分泌され、脂肪の消化に関わる・・・・・・。と言った具合に、胆汁酸は肝臓と腸管の間をグルグルと回っているのです。これを胆汁酸の「腸肝循環」といいます。ヒトでの話ですが、肝臓から胆汁として分泌された胆汁酸のうち、実に90%以上の胆汁酸が回腸で吸収されて、胆汁として再利用されていると言われています。

 余談ですが、吸収→再利用という生理機構をしている有名なものには、唾液があります。詳しくは以前のコラム(牛の解剖37)をご覧ください。

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