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池田哲平のコラム
「休題:牛の体温(2) ~電子体温計の問題点 その1~」

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2011年7月1日

(1)測り直しに手間がかかる
 数秒〜数十秒で測れるという謳い文句で販売されている全ての電子体温計は、いわゆる“予測体温計”なので、最初の数秒〜数十秒の間の温度の立ち上がり方から最終的な体温を予測して測定します。しかし、この最初の数秒の予測中に体温計が抜けたり予期せぬ温度の急上昇や急低下が起こると、体温計のコンピューターは混乱してしまって、体温の予測ができなくなってしまって「エラー」と出ます。じっとしてない牛さんや、測定の途中でウ○チをしてしまう牛さんなんかは、体温計が抜けてしまい頻繁にエラーが出ます。また、排便時や頻繁に努責を繰り返す牛さんでは直腸内に空気が入ってしまい、空気の対流によって温度が一定しないでエラーになるような時もあります。
 こう言ったときは測り直しになるのですが、これがまた結構面倒なんです。暴れる牛さんなんかでは、その牛さんにひっついて一緒に前後左右にフットワークを踏みながら十数秒耐えないといけないのです。電子体温計は構造的に後ろが重いので刺しっぱなしにしていても暴れる牛さんではすぐに抜けてしまうんです。何回もやり直していると体温を測るだけで数分かかってしまう時もあります。
 水銀体温計はシンプルな棒状の構造のため奥まで差し込んでしまえば、あとはそこから紐でつながっているクリップを牛さんの尾根部にくっつけるだけです。途中で外れてもエラーは出ませんし、指し直すだけです。温度が上がりきるまでしばらくかかりますが、その間に診察ができるので、体温を測るためだけに時間を拘束されるというストレスは全くありませんでした。

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