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池田哲平のコラム
「脂肪壊死症を考える(10) 〜治療法は?その3〜」

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2011年6月17日

 これらの治療や薬剤の飼料添加に加えて、ビタミンEを摂取させることも大切です。
 脂肪壊死症の原因の一つに“高脂肪・低ビタミンEの食餌”というのが考えられています。これは、抗酸化ビタミンとして知られるビタミンEが不足することで、摂取された脂質(脂肪酸)が過酸化状態になりやすくなるのですが、この過酸化脂質というものが脂肪壊死症の原因になる、もしくは病態を増悪させると考えられているためです。また、過度に酸化ストレスが亢進することによって脂肪組織で炎症性変化が起き、これが脂肪壊死を悪化させるとも考えられています。

(以下ちょっとムズカシイ補足)
 脂肪を構成する成分の一つである脂肪酸には、飽和脂肪酸(パルミチン酸やステアリン酸など)と不飽和脂肪酸(オレイン酸やリノール酸など)の2種類があります。脂肪を多く体内に取り込むと、当然これらの脂肪酸もたくさん体に吸収されます。吸収された脂肪酸はエネルギー源になったり体(細胞)の構成要因になったりホルモンなどの材料になったりします。この過程で脂肪酸はあらゆる変化を起こすのですが、たまに良くない変化を起こすこともあります。その一つが活性酸素による“酸化”です。2種類の脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸というのは体内で酸化しやすい物質のひとつです。活性酸素による酸化を防ぐために、動物の体は抗酸化物質を食餌から摂取したり体内で酵素として合成したりします。抗酸化物質の代表的なものには、抗酸化ビタミンとしてビタミンA、β−カロチン、ビタミンCやビタミンEがあります。

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