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原田みずきのコラム
へその緒が2本!?

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2020年3月27日

先日、農家さんから「生まれた子牛のへその緒が2本あって、出血している」と連絡がありました。へその緒が2本??どういうこと?はじめて聞く稟告だったので、先輩獣医師にどういう状態なのか聞くと、「臍動脈遺残」という病態だと教えてもらいました。

「臍動脈遺残」とはどういう病態なのでしょうか。まず、子牛の臍の構造から説明していきます。

出生前の子牛の臍には4本の管が通っています。2本は臍動脈、1本は臍静脈、もう1本は尿膜管です。

図に示したとおり(汚い図でごめんなさい)、臍動脈2本は膀胱の両側を通って内腸骨動脈につながっています。臍静脈は肝臓、尿膜管は膀胱につながっています。

出生時にこれら4本の管は千切れます。正常な分娩では臍動脈は膀胱付近まで収縮して、1週間ほどで退行します。臍静脈は臍部に残り、3週間ほどで退行します。尿膜管も同様で、1週間ほどで退行します。

子牛が生まれたときに臍部にあるいわゆる「へその緒」は臍動脈、臍動脈、尿膜管を包んでいた膜が出てきたものです。へその緒は出生後しばらくするとスルメのように干からびて、いずれ脱落します。ですが、へその緒経由で臍の内部に感染が起こると、肝臓までばい菌が達してしまいます。獣医が口を酸っぱくして「へその緒の消毒をしっかりしてくださいね」と言っているのはこのためです。

次回のコラムでは「臍静脈遺残」はどのようにして起こるのかご説明していきます。

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